【ぼかし】風景写真をジオラマ模型のように加工する【チルトシフト】
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【Photoshop講座】被写体の遠景と近景をぼかすことで、擬似的な被写界深度の浅さを再現することができます。平面的な遠近感でぼかせる[チルトシフト]を使用して、広大な集合住宅を近接撮影に見せかけ、ミニチュア化してみましょう。
誇張した補正に備えよう!
ジオラマ模型のように見せる加工では、誇張した彩度やコントラストなど補正が重要なカギとなります。しかし、むやみに高い設定値を適用すると、ノイズの粗さが目立ったり、階調が失われて平面的なトーンになってしまいます。[ノイズを軽減]と[特定色域の選択]を使用して、誇張した補正に備えましょう。
元画像を鮮やかに誇張する
特定の色域だけを補正できる[特定色域の選択]を使用して、木々の緑を鮮やかに調整します。補正によって粒子が粗くなるため、[ノイズを軽減]でノイズを抑えた後、[自然な彩度]で画像全体の彩度を高めましょう。
素材画像を開く
素材画像を開きます。
素材画像は、高層ビルの最上階から撮影した風景写真です。ジオラマ模型のように見せるには、望遠レンズ(ズーム)を使用した視点の高いところから撮影したものが適しています。

※[幅:1600 pixel]、[高さ:1200 pixel] 、[解像度:72 pixel/inch]、[モード:RGBカラー]を使用しています。
画像のノイズを軽減する
[フィルター]メニューから[ノイズ]→[ノイズを軽減]を選びます。
[ノイズを軽減]ダイアログで、[設定]に[初期設定]を選択して、[OK]をクリックします。

[ノイズを軽減]ダイアログ
COLUMN
元画像を保護する!
[ノイズを軽減]や[特定色域の選択]など、これから行う効果の適用は、ピクセルを直接加工する必要があります。元画像を保護したい場合は、[レイヤー]パネルで、[背景]を[新規レイヤーを作成]ボタンにドラッグし、[背景 コピー]を作成して、複製したレイヤーに適用してください。

[特定色域の選択]ダイアログ
木々の緑を鮮やかにする
[イメージ]メニューから[色調補正]→[特定色域の選択]を選びます。
[特定色域の選択]ダイアログで、選択方式に[絶対値]をクリックして選択し、[カラー]に[グリーン系]を選択します。[シアン]に「+50」%、[マゼンタ]に「−25」%、[イエロー]に「+50」%、[ブラック]に「0」%を設定して、[OK]をクリックします。

ドキュメント(部分)
COLUMN
スライダーの色ってなに?
[特定色域の選択]ダイアログの各スライダーの色は、プロセスカラーのCMYKを示しています。設定する数値は、その掛け合わせ率に対して増減する仕組みです。スライダーでの調整は、純色に近づいていけば鮮やかになるので、緑色の場合は[シアン]と[イエロー]をプラス側に、色を濁らせている要素の[マゼンタ]はマイナス側に設定します。

[特定色域の選択]ダイアログ
全体の色を鮮やかにする
[イメージ]メニューから[色調補正]→[自然な彩度]を選びます。
[自然な彩度]ダイアログで、[自然な彩度]に「+49」を設定して、[OK]をクリックします。

ドキュメント(部分)
COLUMN
彩度を高めると階調が失われる!
色の3属性「色相」、「彩度」、「明度」は、互いに影響し合って1つの色をつくり出しています。鮮やかな色の最大値は、彩度100%、明度100%で、色相の違いによって認識できても、そこには階調が含まれていません。これを「彩度の飽和状態」といい、イエロー系の色域では、特に狭い範囲で彩度が飽和状態に達する性質があります。このような現象を抑えて彩度を調整できるのが[自然な彩度]です。
近接撮影によるぼかしを再現する
ぼかし領域が詳細に設定できる[虹彩絞りぼかし]と[チルトシフト]を併用して、カメラの近接撮影時に見られる、被写界深度の浅いぼかしを再現します。平面的な遠近感を画像内でコントロールして、ジオラマ模型のように見せる設定を行いましょう。
被写体に焦点を当て周辺をぼかす
[フィルター]メニューから[ぼかし]→[虹彩絞りぼかし]を選びます。

[ぼかしギャラリー]操作パネル
[ぼかしギャラリー]操作パネルで、中央の[編集ピン]をドラッグして、ぼかし効果の中心(中央の建物の角)に移動します。

[ぼかしギャラリー]操作パネル

[ぼかしツール]パネル
[ぼかしツール]パネルで、[虹彩絞りぼかし]の[ぼかし]に「8 px」を設定します。

[ぼかしツール]パネル
段階的なぼかしで遠近感を強調する
[ぼかしツール]パネルで、[チルトシフト]をクリックし、[チルトシフト]に切り替えます。
[チルトシフト]の[ぼかし]に「15 px」(初期設定)を設定します。
[ぼかしギャラリー]操作パネルで、中央の[編集ピン]をドラッグして、ぼかし効果の中心(中央の建物の角)に移動します。

[ぼかしギャラリー]操作パネル
[最大ぼかし境界線]をドラッグし、ぼかし領域を調整します。

[ぼかしギャラリー]操作パネル
Mキーを押すとマスクが確認できます。

[ぼかしギャラリー]操作パネル(マスク表示)
COLUMN
遠近感を意識して設定する!
[シャープネス境界線]と[最大ぼかし境界線]の間は、段階的にぼかす度合いが強まっていくぼかし領域です。ぼかす度合いを平面的に捉えると地平線が最大です。しかし、素材には地平線が含まれていない場合もあるので、これを「無限遠」という考え方で想定します。無限遠とは、カメラレンズのピントが調整できなくなる距離なので、およその遠景となるものは無限遠と見なしていいでしょう。無限遠から段階的にピントが合ってくる距離感こそが、[チルトシフト]最大の見せ場です。
オプションバーで、[OK]をクリックします。

[ぼかしギャラリー]操作パネル
近接撮影によるぼかしが再現できました。

[Photoshop]操作パネル
被写体を明るく誇張する
風景は遠くになるほど霞んでいます。この霞をはっきりしたトーンに補正すると、近接撮影のような演出ができます。[レベル補正]調整レイヤーに作成したマスクと合わせ、中央部が明るく照らされたような効果を加えましょう。
レイヤーマスクで適用度を変化させる
[レイヤー]パネルで、[塗りつぶしまたは調整レイヤーを新規作成]をクリックして、メニューから[レベル補正]を選びます。


グラデーションツール
まず、レイヤーマスクを設定するため、[ツール]パネルから[グラデーションツール]を選びます。
オプションバーで、[円形グラデーション]を選択し、[逆方向]にチェックマークを入れます。

オプションバー

オプションバー
被写体の中心から右側へドラッグし、ドキュメントの右端でマウスボタンを離します。


[レベル補正]ダイアログ
被写体を中心とした適用範囲を持つレイヤーマスクが設定できました。
[レベル補正]ダイアログで、入力レベルのシャドウ点を「16」に設定し、ハイライト点を「215」に設定します。
被写体を明るく誇張できました。

ドキュメント(補正前)

ドキュメント(補正後)
COLUMN
調整ポイントとヒストグラムの関係を確認する
この設定では、画像のいちばん暗い部分をさらに暗くし、いちばん明るい部分をさらに明るくすることで、実際の風景写真をはっきりしたトーンに補正しました。[レベル補正]のヒストグラムでは、暗い部分(シャドウ領域)が左側、明るい部分(ハイライト領域)が右側です。入力レベルの[黒点]を、ヒストグラムが始まる階調レベルに設定すると、画像のいちばん暗い部分がMAX値の黒になります。入力レベルの[白色点]を、ヒストグラムが終わる階調レベルから、さらに左側の位置に設定すると、画像のいちばん明るい部分がMAX値の白を越えます。「白を越える」とは、設定した[白色点]より右側に残した階調が、すべて白色に置き換えられるということです。これにより、少し白トビを起こした強調するハイライトを表現しました。
遠景を白地に溶け込ませる
ジオラマ模型のように見せるには、地平線まで続く現実の世界をある程度トリミングする必要があります。画像を切り抜く方法ではなく、空間をそのまま活用して、遠景が白地に溶け込んでいる様子を表現しましょう。
カラー分岐点でグラデーションを調整する
[レイヤー]パネルで、[塗りつぶしまたは調整レイヤーを新規作成]をクリックして、メニューから[グラデーション]を選びます。

[グラデーションで塗りつぶし]ダイアログで、[クリックでグラデーションを編集]をクリックして、[グラデーションエディター]ダイアログを表示します。

[グラデーションエディター]ダイアログ

[グラデーションエディター]ダイアログ
[グラデーションエディター]ダイアログで、[プリセット]に[黒、白]を選択します。カラーバーの左端のカラー分岐点を右側へドラッグして、[位置:70%]に設定し、右端のカラー分岐点を左側へドラッグして、[位置:90%]に設定します。[OK]をクリックします。

[グラデーションで塗りつぶし]ダイアログ
[グラデーションで塗りつぶし]ダイアログで、[OK]をクリックします。

[レイヤー]パネルで、[描画モード]に[スクリーン]を選びます。

グラデーションの黒の領域が透過して、背景が表示されました。風景写真をジオラマ模型のように加工できました。
COLUMN
描画モード[スクリーン]の謎?
[描画モード]は、レイヤーとレイヤーの重なり条件を選択できる高度な機能です。[スクリーン]の特性は、前面のレイヤーの反転されたカラーが[乗算]され、明るい部分はより明るく、暗い部分への影響力は弱くなっていきます。黒、白のグラデーションでは、黒の領域が透過し、白の領域が塗りつぶされたような結果になります。
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